任意後見契約発効前の一方的解除あれこれ

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1.はじめに

 今回、任意後見契約が発効する前の一方的解除に携わる機会があったので、それについて記載したいと思います。
 書籍を調べながら進めていったのですが、書籍に書いていないこともあり、結構苦労しました。以下、同様のケースに対応される方の参考になれば幸いです。




2.任意後見契約発効前の解除方法

 発効前の任意後見契約を解除する方法としては、合意解除と一方的解除の2つがありますが、今回は、一方的解除について記載します。

(1)根拠条文
任意後見契約の解除については、任意後見契約法第9条第1項に記載されています。


(任意後見契約の解除)
第九条 第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任される前においては、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができる。


 上記条文に記載されているとおり、発効前の任意後見契約を解除するには、公証人の認証を受けた書面による必要があります。これは、合意解除と一方的解除で変わりはありません。
 一方的解除の場合、公証人の認証を受けた解除通知書を配達証明付き内容証明郵便で相手方に送付する必要があります。


(2)公証人の認証を受けた書面
 公証人に解除通知書の作成を依頼します。解除通知書は、公証人が作成してくれるので問題ないと思いますが、内容証明郵便で送付するので、(念のため)字数制限や行数制限に引っ掛かっていないか事前の確認が必要です。
 解除通知書の内容が固まったら、委任者が公証役場に行って、解除通知書に公証人の認証を受けます。
 なお、公証人の手数料は、5,500円です。


(3)配達証明付き内容証明郵便で発送
 公証人の認証を受けた解除通知書を受任者の住所宛に配達証明付き内容証明郵便で発送します。
 この際、原本を受任者宛に送るので、写しを2部作成し、原本と共に郵便局に持参します。私自身の経験ですが、郵便局に持ち込んだ際、窓口の郵便局員から公証人の認証を受けた解除通知書に委任者の割印がないので、受付出来ないと言われたことがありました。公証人が認証している書面(原本)に委任者の割印をするというのは何とも違和感があったため、他の郵便局にも聞いてみましたが、どこも同じ回答でした。やむなく、委任者宅を訪問し、事情を説明したうえ、割印をしてもらい、郵便局で発送してもらいました。後日、この件について調べてみたら、同様の違和感を記載している同業者のブログを見つけました。


(4)証明書受領後、終了の登記申請
 配達証明書が委任者の手元に届いたら、東京法務局に任意後見の終了登記を申請します。
 登記申請書の記載方法は、東京法務局のHPに記載があります。
https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001351329.pdf
 解除通知書の記載例も記載されているため、とても参考になります。





3.内容証明郵便が届かなかったら・・・

 例えば、任意後見契約締結後に受任者の住所が変わっており、受任者の住所宛に送付した内容証明郵便が届かないこともあると思います。
 私が携わったケースも内容証明郵便が届かず、委任者の元に内容証明郵便が返送されました。内容証明郵便が届かなかった場合の対応方法につき、何冊か書籍を調べてみたのですが記載が無かったため、東京法務局に確認してみました。


東京法務局の回答は、
① 配達証明付き内容証明郵便が返送された後、受任者の住所宛に一般書留郵便で送付する。
② 一般書留郵便も届かず、委任者の元に返送された場合、特定記録郵便で送付する。
上記①または②の方法で受任者に送付できたら、上申書及び送付が完了したことが分かる追跡記録の写しを添付したうえ、終了の登記申請を行ってくださいとのことでした。
(なお、上記回答は、口頭によるものであり、今後、変更の可能性もありますので、ご注意ください)





4.最後に

 任意後見契約の解除の方法は知識としては持っていましたが、実際に携わってみると面倒なことが多いことに気付きました。一度締結した任意後見契約を解除することが無いように、信頼できる人と任意後見契約を締結すべきだと改めて感じました。

執筆・監修
司法書士 髙田義久

司法書士 髙田 義久 

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