
1.はじめに
先日、令和5年度司法書士試験の筆記試験の合格発表がありました。
私は、平成25年に司法書士試験に合格し、合格後約4年間は勤務司法書士として大阪と神戸で勤務し、その後明石市で司法書士事務所を開業し、現在に至ります。間もなく合格して10年が経過し、うち開業して約6年が経過しました。いつの間にか勤務司法書士の期間より開業してからの期間の方が長くなっていました。最近、「光陰矢の如し」という言葉がよく頭をよぎります。
合格してから随分と時間が経ちましたが、合格するまでに時間がかかった(7回受験しました)せいか、割と受験時代の記憶は残っており、特に最後の一年の記憶が多く残っています。
そこで、今回は、来年の司法書士試験に向けて捲土重来を期す方に、来年の試験までの過ごし方について書いてみたいと思います。但し、10年前に合格した人間の話ですので、現在の司法書士試験にそぐわない箇所もあるかもしれません。その辺りは割り引いて読んでください。
2.敗因分析が一番大事
言い古されている言葉ですが、再受験組の方は敗因分析をすることが一番大事だと思います。何が足りなくて不合格になったのかを真剣に分析することが大事です。真剣に敗因分析をしたうえでリスタートしないと、来年も同じ失敗をしてしまうかもしれません。
と、いきなり偉そうなことを書きましたが、私自身、真剣に敗因分析をしてこなかったために7回も受験してしまうことになりましたので、この記事を読まれた方は、ぜひ私を他山の石としてもらえれば、と思います。
まず、私の受験時代の成績についてですが、私自身、択一式は割と得意でした。特に最後の2年間は午前も午後も本試験で30問以上正解しましたので、択一式については、正直不安はありませんでした。
他方、記述式は苦手意識が強く、本試験でもミスすることが多かったです。にもかかわらず、私は真剣に記述式の敗因分析をすることを怠っていました。答練や模試でも相性の良い問題が出れば高得点を取ることができたので、恥ずかしいのですが、本試験でも相性の良い問題が出れば合格できるだろう位しか敗因分析をしていませんでした。択一式が得意だったため、記述式は基準点(足切り点)を超えさえすれば合格できる状態だったことから、その程度の敗因分析しかしなかったのだと思います。その程度の敗因分析しかしてこなかったため、6回目の受験では、択一式はバッチリ、記述式も商業登記は少なくとも合格者の平均レベルは回答できたにもかかわらず、不動産登記でいわゆる名変登記を飛ばすという大失態をしてしまい、不合格になってしまいました。この時はさすがに凹みました。不合格になった6回目の筆記試験の発表後、初めて私は真剣に記述式の敗因分析をしました。
敗因分析として何をしたかというと、LECから出版されている記述式過去問集を購入し、直近10年間の本試験問題をじっくり読みました。解くのではなく、読みました。直近10年間でどういった論点が多く出題されているのかという視点で読んでみると、不動産登記はいわゆる名変登記、商業登記は組織再編が頻出論点だということが分かりました。そのため、名変登記と組織再編は他の合格レベルの受験生よりしっかり量をこなそうと決めました。また、直近数年間の記述式試験の問題の形式を見ると、問題の注意事項に全く同じ文言が記載されている箇所が複数あることも分かりました。全く同じ注意事項が記載されているということは、逆に言うと、それ以外の注意事項が大事ということも分かりました。直近10年間の本試験問題を読んでみて、とても発見が多かったことを今でも覚えています。もっと早く気付けばよかったと思ったことを昨日のことのように覚えています。この敗因分析を元に、翌年の本試験までの勉強方法を早期に確立させたことが合格の決め手だったと言っても過言ではありません。
3.メンタルコントロールはかなり大事
来年の本試験までの間、常にメンタルが安定して調子よく勉強を続けられる人はほとんどいないと思います。むしろ、勉強が予定通り進まなかったり、答練や模試で思うような成績が出せなかったりすると、メンタルが不安定になることも多いと思います。
以下、私がメンタルをコントロールするために意識していたことを記載します。全てを参考にする必要はないと思います。役に立ちそうだなと思ったことだけ取り入れてください。
(1)不安なことは紙に書きだす
漠然とした不安が原因で勉強が調子よく進まないことがあると思います。そんな時は不安の原因を紙に書きだしてみるとよいと思います。どうせ自分しか見ないのだから、思ったことを正直に書きだしてみて、冷静に分析してみるとよいと思います。
例えば、勉強が予定通り進まないという漠然とした不安だったら、可処分時間を捻出する方法を具体的に考えたり、自分が不得意な分野に絞って勉強する(得意なことはやらない)等の対処ができます。また、この勉強方法で合格できるのだろうかといった不安だったら、その不安は敗因分析がきっちりできていない可能性もあります。
(2)自分に自信をもつこと
先ほど敗因分析が一番大事と書きましたが、しっかり敗因分析を行い、それに向けた対策をしていると、弱点が克服されるので自分の勉強に自信が持てます。自信が持てると、少々の不安は解消されますので、メンタルが不安定になることを少なくさせることができると思います。そういった意味でも真剣に敗因分析をすることが大切だと思います。
私自身、6回目の不合格後に真剣に敗因分析を行った後は、自分の勉強方法に自信を持つことができたため、メンタルが不安定になることが少なくなりました。
(3)情報の取捨選別は大事
受験勉強を続けていると、受験仲間やインターネット(SNS含む)を通じて色々な情報が入ってくると思います。「この予備校のこの講座がいいよ」、「この問題集がいいよ」、「この教材がいいよ」等の誘惑が多いと思います。隣の芝生は青々としていて、飛びつきたくなると思いますが、いったん立ち止まってほしいです。他人がいいよと言っているからといって、自分に必要かどうかは全く別問題です。安易に飛びつく→本当に自分がやらなければならないことができなくなってしまう→メンタルが不安定になってしまう、となれば大問題です。
先ほど書いたとおり、真剣に敗因分析を行い、自分の勉強方法に自信が持てれば、安易にそういった情報に飛びつくことはなくなると思います。
(4)自分を知ること
例えば、自分は朝型なのか夜型なのかを知ることも大事だと思います。朝型の人が無理に夜に勉強しても効率が悪いです。朝型の人だったら、どうやったら朝に勉強時間を確保することができるかを考えた方がよいです。自分が調子よく勉強できる環境を作ることができれば勉強の質が上がり、日々の勉強に充実感を得ることができるのでメンタルも安定するのではないかと思います。
私は朝型だったため、苦手な記述式の問題は朝に解くようにし、夜は暗記ものや作業の時間にしていました。
ちなみに、今でも朝型のため、仕事が溜まっているときは朝5時から仕事をしたりします。大変事務作業がはかどりますので、充実感を得ることができます。
(5)休息(特に睡眠時間)を取ること
やはり疲れたら休息を取った方がよいと思います。受験生の中には睡眠時間を削って勉強している人もいるようですが、睡眠時間を削るとあまりいいことはないと思います。睡眠時間を削る→疲れが取れない→頭がさえない→勉強がはかどらない→ストレスがたまる→メンタルが不安定になるといった悪循環に陥りやすいので、睡眠時間は削らずに起きている時間で勉強時間をいかに確保するか(または勉強の効率を上げるか)を考える方が生産的だと思います。
受験時代、私は睡眠が一番のご褒美でした。一週間の勉強スケジュールを立て、6日間で予定通り勉強がこなせれば残り一日は何も考えずにたっぷり睡眠を取るようにしていました。予定通り勉強をこなせた後にたっぷり睡眠を取ることが受験時代の一番の幸福でした。
4.気分転換~オススメの書籍~
そうは言っても、いつも調子よく勉強できる時ばかりではないと思います。何となく勉強のやる気が出ないときもあると思います。
そんな時のために、オススメ書籍を以下に記載したいと思います。
但し、気分転換の方法は人それぞれだと思いますので、読書して気分転換になる人だけ読んでください。なお、先ほど書いたとおり、私は睡眠を取ることが一番の幸福でしたので、受験時代、あまり読書はしませんでした。
(1)元ヤクザ弁護士: ヤクザのバッジを外して、弁護士バッジをつけました 元ヤクザである著者が、弁護士になるまでの軌跡が描かれています。 個人的には、著書の中で記載されている以下の3点が印象に残りました。 ①生活リズムを朝型に変える ②人間関係を取捨選択する ③しつこくなる 割と短時間で読めるので、勉強の息抜きにオススメです。
(2)なぜヒトだけが老いるのか この本によると、人とバナナの遺伝子は50%同じだそうです! また、人とチンパンジーの遺伝子は98.5%同じだそうです!! 人とチンパンジーの遺伝子が98.5%同じなら、人と人の差は誤差の範囲だなと思いました。賢そうに見える受験生との差もきっと誤差の範囲です。 遺伝子から人間の老いの話まで記載されており、最近読んだ本の中では一番面白かったです。
5.最後に
長々と偉そうなことを書いてしまいましたが、捲土重来を期す方にとって、少しでもお役に立てることがあれば幸いです。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
司法書士 髙田
執筆・監修
